町で1番高い柱の上に、幸福な王子の像が立っていました。

全身は上質な金箔で覆われ、両目には明るいサファイア、そして腰の剣の柄には大きな赤いルビーが輝いていました。

町の人々は、その像を大変誇りにしていました。

ある夜、1羽の小さなツバメが像の足元へ降りました。

仲間は6週間も前にエジプトへ飛び立っていましたが、このツバメは、美しい葦に恋をして留まっていたのです。

ツバメが眠ろうとすると、突然、大きな雫が降ってきました。

顔を上げると、幸福の王子の像が涙を流しているのを見ました。

王子は言いました。

「私は、生前は悲しみを知りませんでした。宮殿の高い塀の中では、悲しいものは何1つ入ってこなかったからです。」

「しかし、死んでこの高い場所に立ってからは、この町のすべての醜さや悲惨さを見て、涙が止まらないのです。」

王子は、熱病にうなされる子どものために、自分の剣のルビーを運んでほしいとツバメに頼みました。

ツバメは寒さのためエジプトへ急ぎたかったのですが、王子の悲しみに心を打たれ、ルビーを運んでいきました。

翌日、王子は、寒さと空腹で作品が書けない若い劇作家のために、自分の片目のサファイアを運び、届けてほしいとツバメに頼みました。

ツバメは反対しましたが、王子の願いを聞き入れました。

さらにその翌日、王子は、マッチを溝に落としてしまった小さなマッチ売りの少女のために、もう片方のサファイアを運ぶように頼みました。

ツバメは「そんなことをしたら、あなたは盲目になってしまう」と訴えましたが、王子は頑として譲りませんでした。

ツバメは、もう目が見えなくなった王子に言いました。

「私はエジプトへは行きません。あなたのもとに、ずっと残ります。」

王子はツバメに、町を飛んで、見たものを語ってほしいと頼みました。

ツバメは町中の貧しい家々を飛び回り、飢えた子どもの顔、貧しい人々の惨状を王子に語りました。

王子は言いました。

「ツバメよ、私をおおっている金箔を、1枚1枚はがして、貧しい人々に分けてやっておくれ。」

ツバメは、王子の全身から金箔をはがし、貧しい人々に配りました。

金箔を受け取った子どもたちの顔には赤みが戻り、「パンが買える!」と喜びました。

やがて、雪が降り、厳しい寒さがやってきました。

すべての金箔を失った王子の像は、みすぼらしい鉛色になりました。

ツバメは、寒さに弱り果て、ついに王子の足元に落ちて、静かに息絶えました。

その瞬間、像の鉛の心臓が「カツン」と音を立てて2つに割れました。

次の朝、町の偉い人たちは、みすぼらしい像を見て「これでは幸福な王子ではない」と処分を決めました。

像は溶鉱炉で溶かされましたが、割れた鉛の心臓だけは溶け残りました。

人々はそれを、死んだツバメの亡骸と一緒にゴミ捨て場へ捨てました。

その頃、天国では、神様が天使に命じました。

「この都から、最も尊いものを2つ、私のもとへ持ってきなさい。」

天使は、ゴミ捨て場から割れた鉛の心臓と、ツバメの亡骸を拾い上げ、天に運びました。

神様は仰いました。

「そうだ。お前は正しく選んだ。私の楽園の庭では、この小さな鳥が永遠に歌うだろう。そして私の黄金の都では、幸福の王子が私を賛美するだろう。」