
夏、お堀に囲まれた古い屋敷の、
イグサの茂みの中。
アヒルのお母さんが卵を温めていました。
とうとう、パチパチと卵が割れ、可愛らしい黄色いひなたちが顔を出します。
しかし、一番大きな卵だけが、なかなかかえりません。
やっと割れた最後の卵から出てきたのは、体は大きく、色はねずみ色で、とてもみっともない姿をしたひなでした。
母アヒルは「七面鳥のひなか」と疑いますが、このひなが一番上手に水に潜って泳いだのを見て、「きっと私の本当の子だ」と決心します。
翌日、母アヒルはひなたちを「壮大な世界」である鶏の庭に連れて行きます。
しかし、みにくいアヒルの子は、そこでもたちまち嘲笑と意地悪の的になります。
兄弟たちは彼を突き飛ばし、他のアヒルは「みっともない」と噛みつき、身分の高い老アヒルは「いっそ猫に捕まればいい」と冷たい言葉を浴びせます。
誰も彼をかばいません。
彼は、庭中の家畜、アヒル、ガチョウ、鶏、誰も彼を認めてくれないことに絶望し、自分の居場所のなさに惨めさを感じます。
ついに、あまりのいじめに耐えられなくなり、みにくいアヒルの子は、家族と仲間たちの元から、ただ逃げ去ることを選びました。
アヒルの子は、あてのない旅に出ます。
彼は沼地で二羽の野生のガチョウに出会いますが、彼らもアヒルの子を馬鹿にします。
その時、突然の銃声が響き、ガチョウたちは猟師に撃たれて倒れます。
猟犬が来ますが、あまりにみにくい姿のため、アヒルの子には目もくれませんでした。
彼は寒くなり始めた秋を耐え忍び、やがて白鳥の群れを見て、その美しさに魂を奪われます。
やがて、凍るような厳しい冬が来ました。
彼は氷の張った沼の中で動けなくなり、翌朝、通りかかった農夫に助けられ、家に連れて行かれます。
しかし、農家の子供たちにからかわれるのを恐れたアヒルの子は、パニックになり、ミルクの壺に飛び込み、家の中を大混乱にして、再び逃げ出します。
彼は一冬を、イグサの茂みに隠れて、凍りついた沼で飢えと寒さに耐えながら過ごしました。
春になり、暖かな陽ざしのもと、アヒルの子は翼を広げると、以前よりもはるかに強く羽ばたけることに気づきます。
彼は空高く舞い上がり、美しい庭園の池へと降り立ちます。
そこには、以前に見た美しく気高い白鳥たちが泳いでいました。
アヒルの子は決心します。
「こんなみにくい姿のまま生きるより、あの高貴な鳥たちに殺される方がましだ。」
彼は首を垂れて、白鳥たちの方へ泳いでいきました。
しかし、白鳥たちは優しく彼を迎え入れ、首で彼を撫でます。
アヒルの子はふと水面に目を落としました。
そこに映っていたのは、もうみにくい灰色の鳥ではありません。
彼は、頭を高く上げる、気品ある美しい白鳥になっていたのです。
彼は、これまでの苦難の日々を思い出しましたが、今のこの大きな幸福の前には、もはや何も悲しくありませんでした。
そして、子供たちが「新しい白鳥が一番美しい!」と声を上げるのを聞きながら、その美しさに誇りを感じ、満足そうに水面に首を突っ込むのでした。